技術書典2 で 邪悪なWebクローラー読本 を頒布しました

技術書典の存在を知ったのはちょうど1年前ごろで、当時の職場のSlackでこのイベントの情報が流れてきたのがきっかけだった。

techbookfest.connpass.com

自分自身の技術スタックは尖ったものが少なく、特に人様に向けてお披露目できるような知見を持ちあわせてはいなかった。――Webクローラーにまつわるものを除いては。

Webクローラーそのもの自体は広くありふれた存在であるが、これを業務上運用するとなると様々な課題が持ち上がり、現実クリーンな運用をしている組織は Google をはじめ指折り数える程度しかないであろう。また、ひとたびその性質に倫理的ではない観点から語ろうものであれば、各方面からの指摘がたちまち飛んでくることになる。

わかっている、わかっているのだ。それでも、現場はやるしかない。

数年前、プログラミング経験もろくにない駆け出しSEだった僕は、それをやった。実にうまいことやった。今まで経験したどんな電子ゲームよりも楽しかった。そして、やっていくうちにありとあらゆる知見が蓄積された。しかしその知見は、CSVパーサーや排他制御もまともに書けないような同僚に引き継がれることはなかった。いずれ僕は会社を辞めた。

しかし、この知見は誰かに共有したい、この世界に存在する同類と共有したいという気持ちがあり、いくつかの勉強会で資料非公開という条件の元に発表をしたことがあったが、形に残らないというのがなんとも残念であった。その発表形態のひとつとして、同人誌という可能性を見いだしたのが技術書典であった。


同人活動に携わっている知人は少なくなかったが、自分が同人活動に携わるのはこれが初めてだった。昔から作文は非常に苦手であり、一人で本を書くというのはどうにも不安であったため、共同執筆者を探していた。そんな時にたまたま知り合ったのが momonga 氏であった。

執筆の目的を伝え自身の知見を共有すると、ほぼ初対面であったが執筆を快諾してくれた。こうして、サークル「自動機械」が誕生することとなった。

技術書典 (1回目) の応募は残念ながら落選となってしまったものの、技術書典2 は当選した。

本を頒布できるというところまでは決まったが、次に課題となったのはこの本を求める読者に手にとってもらうこと、そして満足してもらうことであった。

本としてのクオリティを高めつつ、想定読者層にアプローチできそうな共著者を検討したところ、挿絵が描けてこの方面に知見があり独特な方面へのつながりを持つ似非原さんに声をかけていた。これも初対面であったが快諾して頂けた。また、同人誌製本に知見がある、まくるめ氏にも監修を依頼し製本方面で助言を頂くこととなった。

執筆編集と製本は GitHub & GitBook を用いて行った。余談だが GitBook で製本をしたのは失敗で理由は様々あるがとにかく使わない方がよい。


もともと100部を売るつもりでいたが、入稿直前に様子がおかしいことに気がついた。

注目度が思ったよりも高いらしく、100部では足りないのではという予感があったため、急遽頒布部数を200部に増やした。

(最終的に被チェック数は201になった)

知人のアドバイスもあり見よう見まねで体裁を整えた。

そして、会場から2時間少々で無事完売。

値段設定はやや強気であったが、釣り銭が不要であることや原価が高めのこと、内容が内容だけに今回限りで二度と刷られないことを考えると妥当ではあると思う。

会期中、ブースにやってきた知人や見知らぬ同好者と、他所では決して話せない内容を語らうのは非常に楽しかった。インターネットの時代は終わりだ。

終了後、執筆各位で打ち上げをして、またいつもの日常に戻っていった。帰りの満員電車内で、珍しく気分は晴れやかだった。数年間の心の中の重荷が落ちたような、懺悔の後のような、そのような心持ちであった。


エゴサーチはするタイプの人間なので、した。

評判はほぼ好評一辺倒で驚きだったが、これはちょうど1年前に見いだした同人誌という媒体の特性にこの題材がうまくマッチしたのだと今にして思った。

自分の行動によって他人に良い(かどうかはさておき)影響を与えられたのは非常に嬉しく、個人的に尊敬している各位も反応しているのを見てしばらく感無量であった。

今は、仕事でも趣味でもクローラーを書いていない。